12年越しのリベンジ、強い思いは技術や才能を超える

バウトレビュー

新チャンピオン、堤聖也!!」

そうコールされた瞬間、
泣き崩れた。

壮絶な打ち合いを制し、
チャンピオンベルトを巻いたのは堤選手。


「今日だけ上回れば良い……」
「今日だけ……」

戦前にそう言っていた通りの結果に。


12年越しのリベンジを果たし、
天を見上げ叫ぶ。


この試合にすべてをかけて
超エリートの井上拓真選手に挑んだ。


下馬評は圧倒的に拓真選手。


私の予想も圧倒的ポイント差で拓真選手、
すいません、外しました。


いや~堤選手、強かった!


何がこの試合の明暗を分けたのか
考察してみましょう。

ずっと拓真だけを見ていた

勝因はこれに尽きます。


そうずっと、
拓真選手を追いかけていた。


12年前に負けてからずっと
一度負けたあの日から。


拓真選手を倒すために、
ボクシングを続けてきた。


開始からその思い、
闘争心むき出しのスタイル。


最近、流行りのスマート
スタイルではけしてないけど
観るものの心を掴む戦い方。


技術で勝る拓真選手は堤選手の
手数の隙間をついてキレのある
カウンターを打ち込む。


「これはさすがに効いたか!?」
「えっ?効いてないの?」


かまわず前に出続ける。


もし私が拓真選手の立場なら
絶対に「怖い」と感じますよ。


なぜなら、
どう考えても自身のあるパンチを
打ち込んでもドンドン前に出てくる。


「ゾンビなの?」って思いますから。


それでも自力で勝る拓真選手が、
前半はうまく戦い、有利に試合を進める。


そして、
後半もこのまま行くのかと
思ったが……。

徐々に堤ワールドに引きずり込まれる

ところが、
中盤から拓真選手に異変が。


堤選手のなんとしてでもパンチを当てる、
軽いパンチでも良いから最初に当てる。


そして、
次の2発、3発につなげる作戦に
どっぷりハマっていく。


さすがに手数で圧倒されると、
そこまで重いパンチではなくても
効いてくる。


有効打で勝っても、
手数で押されて
後手後手にまわらされる。


拓真選手に疲れが見え始める。


徐々にロープに追い詰められる
シーンが増えはじめ、


迎えた、
10ラウンド開始30秒
執拗に追いかけパンチを打つ堤選手。


バランスを崩しロープに
もたれる様に身体を預けた拓真選手に
レフリーが割って入りダウンを取られる。

これ微妙なんですよね。


「ダウン!」の判定が出たとき
「ほんとに!?」と思いました。


拓真選手からしたら、
ロープにもたれかかっただけ。


それが証拠に、
納得のいかない表情。

でもこのラウンド、
拓真選手の様子がどこかおかしかった。


必要以上にセコンドを
ちらちら見て何だか自信のない様子。


”心ここにあらず”とは、
まさにこの事で集中力を欠いていた。


そこに拓真選手を倒すために
ここまでやってきた堤選手の
パンチが当たる。


打ちぬいた渾身のパンチでは
なくても、信念がこもった攻撃に、
フッ飛ばされてもおかしくなかった。


完全に油断からくるもの。


とてももったいない。

強い思いが勝利を引き寄せた

まさに引き寄せの法則ですよ。


この日は堤選手は、
負けるなんて1ミリも思わなかったはずです。


ポジティブ思考でベルトを巻くことしか
考えていなかった。


一方の拓真選手はどうだったのか。


どこかのタイミングで、
「もしかしたら……」
一瞬でも、そんな思いがよぎったはず。




たとえば、子どもの頃
好きな遊びに夢中になり
日が暮れるのにも気が付かず
泥だらけになった記憶。


好きが強すぎて、思いが強すぎて、
いつのまにか目標や夢をクリアしたこと。


この日の堤選手は
私たちが忘れかけていた何かを、
思い出させてくれる試合をしました。


正直、堤選手が勝つとは
思いませんでした。


最後の勝利者コールで、
泣いてしまった自分がいます。


「拓真選手がいなかったらボクシングを辞めていた、
拓真選手は僕の恩人です」



堤選手はこの試合を
そう締めくくりました。


感動をありがとう!

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